本研究は中国古代の軍事制度を、新出史料を利用しつつ、通時的・総合的見地から解明することをその目的とする。研究の柱は二つある。 (1)新出文字史料の整理と、それを利用した秦漢軍事制度の分析。 新出の木簡・竹簡史料中の、軍事に関わる史料を抽出し、分類・検討を加える。この作業を通じて、漢帝国の辺境防備体制とその機能を解明し、さらには兵員の構成とその社会的地位、民衆統治と軍政との接点にも迫る。 (2)中国古代の兵制の総合的、通時的検討。 秦漢時代の制度を、主として魏晋南北朝の兵制と比較しつつ検討し、その通時的な展開を明らかにする。兵制そのものに限らず、法制(刑罰と軍事の関係、いわゆる「兵刑一致」の諸相)、官制(官僚制度における軍事の位置)のなかの軍事的要素にも注意を払い、軍事が持つ政治的・社会的なインパクトを分析してゆくことを目指す。
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