研究課題/領域番号 |
20330001
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
陶安 あんど 東京外国語大学, アジアアフリカ言語文化研究所, 准教授 (80334449)
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キーワード | 中国法制史 / 行政法 / 奏〓書 / 司法文書 / 訴訟手続 / 出土史料 / 張家山漢簡 / 岳麓秦簡 |
研究概要 |
昨年度は一昨年度に引き続き嶽麓書院所蔵秦簡の司法文書簡牘の整理に重点を置いて、秦代における文書行政の仕組みについて研究を進めた。具体的に次の四つの作業を行った。1、文書構造表の作成、2、簡牘背面の刻み込みの分析、3、排列の復元と表題簡配置の検討、4、遺漏簡牘の検出。 1、複数の文書から構成される司法文書について、来源ごとに文書を整理し、全体の複合的構造を分析した。それによって、多くの簡牘の排列位置が確定したのみならず、『奏〓書』との比較研究を通じて当時の司法手続および奏〓手続を正確に復元する手掛かりが多く得られた。 2、3、岳麓秦簡の司法文書簡牘は形態・筆跡・記載内容によって四種類の文書群に分かれるが、現存簡牘の最も多い第一種の文書群には、殆ど全ての簡の背面に斜めの刻み込みが施されている。各事案の排列は、この刻み込み・正面の文章、・文書の書式を総合的に判断して確定した。他の三種類の文書群には、刻み込みがないので、文章と書式のみによって排列を分析したが、個別箇所を除けば、この三種類の事案ごとの排列もほぼ確定することができた。事案間の排列関係については、第一種では、事案の年代とともに刻み込みが参考になったが、他の簡牘との接触によって生じた背面の印迹も今後検討しなければならないので、排列の確定にはまだ至っていない。 4、通し番号が附せられた簡牘は都合2198枚あり、それを全て記載内容と筆跡とによって整理して分類した。それによって、司法文書簡牘も少なからず発見され、一部の遺漏を解消することができた。 また、中国西北出土簡牘文書史料の再検討に向けて、台湾中央研究院歴史語言研究所所蔵居延漢簡の現地調査を実施し、主として木簡の形態調査(重量・長さ・形状の測定)に力を注いだ。それにより得られた知見は、嶽麓秦簡司法文書簡牘の形態分析および排列復元にも大きく寄与した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた作業は概ね計画通り実施することができたが、作業の途中に整理の完成を妨げる二つの要因が新たに発覚した。一つには、709枚の残簡が未整理のままである。もう一つには、第二種の文書群については、背面に刻み込みがなく、事案の年代も明瞭でないため、事案の前後配置を復元する手掛かりに欠ける。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、残簡の整理と行政府による司法手続固有の構造の分析に重点を置いて研究を進める予定である。残簡は、記載内容・形態・残欠状態・筆跡によって分類し、綴合を試みる。これによって現在釈文に残されている空白の相当部分が埋められることが期待される。司法手続の構造は、引き続き文書構造に焦点を当て、張家山漢簡『奏〓書』との比較研究を行う予定である。なお、第二種の文書群の事案配置については、現在有効な手掛かりが少なくやや手探り状態であるが、背面の印迹を中心に分析を継続する。
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