研究課題/領域番号 |
20330005
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
笹田 栄司 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20205876)
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研究分担者 |
村上 裕章 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (20210015)
鈴木 秀美 大阪大学, 大学院・高等司法研究科, 教授 (50247475)
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キーワード | 裁判の公開 / 裁判を受ける権利 / 報道の自由 / 裁判員制度 / イン・カメラ / 法的聴聞権 |
研究概要 |
本研究の目的の一つは、裁判の公開を制限する近時の立法を取り上げ、当該立法の問題点の検討を行うこと、及び、今後の立法課題について検討を行うことである。初年度にあたる平成20年度では、前者の観点から裁判員法を念頭に置いて、「刑事手続における証言拒絶権・押収拒絶権-報道の自由との関連において」(報告者 : 池田公博神大准教授、コメンテーター : 鈴木秀美阪大教授、川岸令和早大教授)を開催し、後者の観点から情報公開法を念頭に置いて、「イン・カメラ手続に内包されている憲法問題の分析・検討」(報告者 : 笹田栄司北大教授、コメンテーター : 村上裕章九大教授)を開催した。 「裁判の公開」原則の課題一般については、笹田「裁判の公開」(『憲法の争点』)で分析を加えているが、憲法82条2項の「公序」概念の拡張による(立法による)公開制限には限界があることを認識すべきである。ここでは憲法32条の観点が看過されてはならない。その意味で、情報公開訴訟において検証物提示命令にイン・カメラ審理代替機能を認めた高裁決定を斥ける最高裁決定(平成21・1・15)が注目される。この決定は、情報公開訴訟においてインカメラ審理を用いることは、「訴訟で用いられる証拠は当事者の吟味、弾劾の機会を経たものに限られる」との民事訴訟の基本原則に反するから、「明文の規定がない限り、許されない。」と判示している。この基本原則は裁判を受ける権利の保障する法的聴聞権(審尋請求権)毎と重なるところがあり、公開制限の立法化にあたっては、憲法82条とともに憲法32条も勘案する必要がある。加えて、イン・カメラ手続には、原告が求める情報について秘密保持の必要性があるか否かについての決定と本案訴訟における判決が基本的に一致する場合(情報公開訴訟)と、両者が一応独立している場合が含まれている。憲法上の問題状況は各々異なるから、その特性に応じた立法化が不可欠である。
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