研究課題/領域番号 |
20330007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡村 忠生 京都大学, 法学研究科, 教授 (30183768)
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研究分担者 |
渡辺 徹也 九州大学, 法学研究院, 教授 (10273393)
高橋 祐介 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50304291)
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キーワード | 資産 / 取得価額 / 基準価格 / 事業体 / 譲渡所有 / 人的資本 / 組織再編成 / 現物分配 |
研究概要 |
本年度は、9回の研究会(第27回~第35回)と、研究代表者および分担者による国外調査(米国)を行い、取得価額の本質を追究した。本研究における総論的検討として、資産概念が過去の支出と将来の利益という二重性を有することを明らかにし、キャピタル・ゲイン課税の広がり、とりわけ、人的役務提供に対するキャピタル・ゲイン課税の可能性について、主として米国の裁判例を取り上げて検討した(論文として公表)。また、資産と取得価額の意味が顕在化する場面として、合併による法人取得に先行して対象となる法人株式を取得する場合(子会社化するなど)を取り上げ、対象法人株式の取得価額を課税上どのように扱うかについて検討を行い、米国の研究者および租税弁護士への調査を行った。本研究の各論的検討として、(1)人と教育や技能習得に関する税制の領域では、給与所得控除および特定支出控除制度の改正を手掛かりに、人的資本及び教育支出控除のあり方について検討を行い、限定的な資格取得費控除制度の問題点を指摘した(論文として公表)。(2)研究開発や知的財産権への課税の領域には、総論的検討としてあげたキャピタル・ゲイン課税の検討が深く関係する。(3)事業活動への参加や投資に関する課税の領域では、非法人事業体、具体的には民法上の組合や有限責任事業組合の組合員が組合から受けた所得の分類について研究を行い、いわゆる総額方式を組合課税の基本と位置づけた検討を加えた(判例評釈として公表)。(4)事業の組織に関する課税の領域では、日本の適格現物分配制度と、米国法における子会社清算の課税ルールとの比較法的検討を行った(論文として公表)。(5)国際取引や国際移動への課税の領域では、外国法人税の意味を論じた(判例解説として公表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究会での着実な議論、学会等での報告・論文発表は従前以上に進められ、自己評価報告書で今後の課題とされた各論的領域への着手(特に、人と教育の領域と総論の連関)も行われているが、各論的領域と総論部分との連関については、引き続き進捗度を高める必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者(岡村)は、総論的検討の推進と各論的検討の補充を、研究分担者(渡辺)は、事業組織に関する課税の領域で「資本金等の額」の概念からの総論への還元を、研究分担者(高橋)は、人的資本とそれを踏まえた教育をめぐる課税制度のあり方を、資産概念一般に照らして検討する。ただし、各論的領域分担を緩和し、相互乗り入れによる議論の活発化、総論への/からの視線の移動を通じた理論純化をはかる。研究の最終年度として、資産概念と取得価額の機能的考察の成果を、シリーズ的に公表するよう努力する。これは本研究の、いわば総まとめの成果と位置づけられる。
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