2008年度は、フランスおよびEUにおける企業買収法制の基礎になる立法資料の収集を行ない、さらに関連する文献の収集と検討を進めた。具体的にはとくに、企業買収に関する2004年4月21日の欧州共同体指令第2004-25号をフランスにおいて国内法化した2006年3月31日の法律第2006-387号に関して、その立法資料と関連文献により内容の検討を進めた。 また、欧州共同体の内部において、フランスの法制度と比較する見地から、企業買収に関する2004年の欧州共同体指令が同様に国内法化されているドイツの法制度に関して、ドイツの文献の検討も進めている。ドイツとフランスとでは、欧州共同体指令が認めている選択肢のうち異なったものが採用されており、そのことにともなう具体的な差異と効果の検討を進めている。そのような構成国間の相違に着目して検討を進めることは、欧州共同体における企業買収法制の意義を考えるうえで有意義なものと考えている。 あわせて副次的に、会社法の分野において欧州共同体構成国間の会社の合併(越境合併)、コーポレート・ガヴァナンス・コード、欧州協同会社(欧州協同組合)に関して、共同体法に対するフランス会社法の対応を一括して定めたフランスの「会社法を共同体法に適合させる各種の規定を定める2008年7月3日の法律第2008-649号」について、立法資料と関連文献によりその内容を検討した。その成果が近く立法紹介として、日仏法学25号(2009年、有斐閣)に公表される予定である。 また、Paris第2大学のMichel Germain教授が2008年11月から12月にかけて東京に滞在された際に、フランス会社法について企業買収法制に関わる問題も含めて意見交換をしており、その成果は同教授による講演の翻訳という形で慶應法学(2009年)に近く公表される予定である。
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