2009年度は、フランスおよびEUにおける企業買収法制の内容の検討を進めた。具体的には、企業買収に関する2004年4月21日の欧州共同体指令をフランスにおいて国内法化した2006年3月31日の法律に関するフランスの文献を検討し、あわせて、企業買収に関する2004年の欧州共同体指令が同様に国内法化されているドイツの法制度に関するドイツの文献の検討も進めた。ドイツとフランスとでは、欧州共同体指令が認めている選択肢のうち異なったものが採用されている。とりわけ、企業買収に関する2004年の欧州共同体指令9条が定める中立義務をフランスは国内法化しているのに対して、ドイツではそうした中立義務を企業が任意に導入する(opt-in)ことを認めるにとどまり、法律上そうした中立義務を定めることはしていない。そのような構成国間の相違に着目して、欧州共同体における企業買収法制の意義の検討を進めている。 あわせて、会社法の分野において欧州共同体構成国間の会社の合併(越境合併)、コーポレート・ガヴァナンス・コードなどに関して、共同体法に対するフランス会社法の対応を一括して定めたフランスの「会社法を共同体法に適合させる各種の規定を定める2008年7月3日の法律第2008-649号」の内容を検討し、その成果を日仏法学25号(2009年)に公表した。また、Paris第2大学のMichel Germain教授が2008年11月から12月にかけて東京に滞在された際に企業買収法制に関わる問題も含めて意見交換をし、同教授による講演の翻訳を慶應法学15号(2010年)184頁以下に公表した。さらに、本研究にもとづくフランスの企業買収法制の内容の検討について、フランスの株式会社の機関構成の内容とあわせて、2010年3月12日に経済産業省で開かれた「企業法制の在り方に関する勉強会」において報告した。
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