本研究は、災害復興のあり方を補償・居住福祉・地域再生との関係で包括的・総合的に検討しているが、第1に、各種法律による補償のあり方を総合的に検討し、第2に、従来の居住福祉法学的視点の欠落に鑑みて、被災者居住の観点からの災害復興のあり方を見直し、また第3に、地方自治論ないし被災地域再生のあり方という側面から、(前記住宅問題以外に)雇用、医療、教育、消費など被災者生活の包括的再建・再生のメカニズムの構築を行う。 その際のスタンスとしては、近時の地方自治論で風靡している新自由主義的なコスト削減論ないし自己責任論ではなく、市民生活のシビルミニマムとしての居住の確保という居住福祉学の視座から、社会的弱者(居住・災害弱者)への包有的(ソーシャル・インクルージョン的)な公共的支援の方途を示すというもので、わが法学では基本的に欠落し、比較法学(とくに日米比較)的には、人種的・階級的隔離が進む現実に対して批判人種法学など進歩的議論に多くの示唆を受けるものである。
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