本研究のテーマは、ポスト「失われた10年」の日本経済の分析である。日本経済が長い経済の低迷からどのような要因で回復したのかをマクロ経済面を中心に理論的・実証的に分析すると同時に、「失われた10年」が終わった後の日本経済でどのような経済政策が望まれるかを、金融政策・銀行規制を中心に分析することを目的としている。昨年後半から、日本経済の景気は急速に悪化している。これは、世界的同時不況の影響が大きいが、日本経済ではそれ以外に、2000年代前半から半ばにかけての回復過程の反動という側面も少なくない。 本年度は、日本経済の当時の回復過程において、なぜ「ゾンビ企業」が復活したのかを、上場企業を中心に実証的に考察した気分析では、まず先行研究の手法を修正することによって各年における「ゾンビ企業」を判別する一方、「ゾンビ企業」がどのよっな要因で「非ゾンビ企業」になっていったのかを、パネルデータの多項ロジットモデルで推計を行った。また、新聞記事などから日本経済の回復過程で報道された各種のニュースを収集することによって、いわゆるイベント・スタディーも行った。これらの実証分析の成果は、複数の論文としてまとめられ、現在、刊行に向けての準備を進めている。 これらの実証分析によって日本経済回復の原因を解明することが部分的に解明されたと考えられる。ただし、得られた実証分析を裏付ける理論モデルの構築も、今後は研究の大きな柱となる。本年度の後半では、その準備に取り掛かっている。特に、不確実性下での企業化行動や、バブル崩壊後の経営者行動の変化といった、最近の「行動経済学」の理論的発展をある程度踏まえたマクロ動学モデルを構築することによって、ポスト「失われた10年」の日本経済を分析する理論的フレームワークを提供することを目指したいと考えている。
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