2009年度の研究では、これまでに引き続き、ポスト「失われた10年」の日本経済を分析した。日本経済は長い低迷から抜け出しつつあったが、リーマンショックによる世界同時不況などで、何度もその回復は足止めとなった。新たなマクロ経済環境の下で、日本経済が本格的に回復するにはどのような要因が重要なのかをマクロ経済面を中心に理論的・実証的に分析した。 具体的に行った研究は以下の通りである。 (1)企業レベルのミクロデータを用いた分析を行い、日本経済の回復過程において、なぜ「ゾンビ企業」が復活したのかを、上場企業を中心に実証的に考察した。 (2)新聞記事などから日本経済の回復過程で報道された各種のニュースを収集することによって、いわゆるイベント・スタディーも行った。 (3)「失われた10年」およびその後の10年間はデフレ基調が続く中、金融政策もかつて経験したことのない超金融緩和政策が実施された。これら非伝統的な金融政策の在り方を理論的・実証的に考察し、その成果を複数の論文にまとめた。 (4)得られた実証分析を裏付ける理論モデルの構築も同時並行的に行った。特に、不確実性下での企業化行動や、バブル崩壊後の経営者行動の変化といった、最近の「行動経済学」の理論的発展をある程度踏まえたマクロ動学モデルを構築し、論文にまとめる作業に入っている。 銀行規制の分析がやや遅れているが、それ以外の分析は複数の論文が完成しており、おおむね順調に進展している。これまでの理論的・実証的分析によって日本経済回復の原因を解明することが部分的に解明されたと考えられる。
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