本研究の目的は、ポスト「失われた10年」の日本経済を分析することにある。本研究を開始した当初は、日本経済は長い低迷から抜け出しつつあったが、その後リーマンショックによる世界同時不況などで、何度もその回復は足止めとなっている。本年度の研究ではこの点も考慮に入れつつ、日本経済が本格的に回復するにはどのような要因が重要なのかを、ミクロデータとマクロデータの両面から検証を進めた。具体的には、(1)日本経済の回復過程においてなぜ「ゾンビ企業」が復活したのかを、新聞記事などから日本経済の回復過程で報道された各種のニュースを収集すること等によって上場企業を中心に実証的に考察すること、(2)なぜ1990年代に財政赤字が拡大し、それが財政政策の有効性にいかなる影響を与えているのかを理論的・実証的に考察すること、(3)デフレ基調が続く中、金融政策もかつて経験したことのない超金融緩和政策が実施されたが、これら非伝統的な金融政策がいかなる効果があったのかを理論的・実証的に考察すること、の3つの問題に関して研究を多角的に行った。いずれの分析結果もその成果の一部は既に論文としてまとめられており、なかには国際専門誌で公刊予定のものもある。当初の計画より銀行規制の分析がやや遅れているが、それ以外の分析は複数の論文が完成しており、おおむね順調に進展している。これまでの理論的・実証的分析によって日本経済回復の原因を解明することが部分的に解明されたと考えられる。
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