研究概要 |
本年度の研究で,資源配分メカニズムに関して研究対象としたものは,完全競争的市場メカニズム,非分割財市場メカニズム,労働市場メカニズム,そして環境意識が市場メカニズムに与える影響である.下村と大和が行なったのは,複数の完全競争的市場均衡が存在する単純な純粋交換経済における価格調整の動学的安定性と経済主体の民族多様性の問題の実験分析である.理論上経済主体間の衡平性が達成される市場均衡は一般に動学的には不安定であり,換言すれば経済主体間に格差をもたらすような市場均衡に価格は収束する傾向がある.この理論モデルを被験者同士,割と友好的である集団で行なうことと,歴史あるいは文化の違いにより必ずしも良い関係とは言えない集団の混成で行なうのとでどのように違うかを相対取引実験により確かめた.結果は,友好的か否かに関係なく衡平な取引が発生し,その取引量にのみこだわる集団が自己発生し,およその被験者がその取引量に倣っていった.武藤およびその研究室は,特許のライセンス契約において生産量依存支払いを用いた場合の価格交渉の考察と,マッチング理論による非分割財市場および労働市場の均衡の考察を行なった.いずれの研究においても均衡の安定性について新たな知見が得られ,論文にまとめた.瀋は選択型実験法を用いて,大阪モノレール南伸計画の「門真市駅」から「瓜生堂駅」までの延伸事業を取り上げ,地域の環境状況と交通ネットワークの変化を考慮した上で,モノレールの費用便益分析を行った.その結果,今回の大阪モノレール南伸計画の延伸事業は,純便益を生み出す可能性が極めて高いことが示唆された
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