研究概要 |
(1)人口変動の影響に関する研究 財政システム班(岩本・福井)は,引き続き人口変動が医療・介護保険財政に与える影響を分析するために,医療・介護保険財政モデルの改良をおこない,2009年9月版をおこなった。今回の改訂では,これまで実際と乖離の大きかった公費負担の推計について改良を図った。協会けんぽと国保加入者数のパネルデータをもとに,加入者割合のモデル化をおこない,将来の加入者割合を推計した。これによって,従来のモデルで考慮されていなかった協会けんぽと国保への公費負担を推計できるようになり,公費負担の長期的な需要をより正確に把握できるようになった。この推計をもとに,長期の財政運営と税制改革の方向性に関する検討をおこなった。さらに,社会保障国民会議のシミュレーションを反映したデータのアップデートをおこなった。そして,積立方式への移行あるいは修正賦課方式の導入によって,世代間の負担構造が現行制度からどのように変化するかを分析した。積立方式の移行については,いわゆる「二重の負担」が障害になるといわれているが,積立方式で二重の負担を被る世代は,現行制度のもとではより高い負担を被ることになり,積立方式への移行が彼らの厚生を低下させるわけではないことが示された。 (2)医療・介護サービスの効率化・改善に関する研究 提供システム班では,医療・介護サービス改善のための課題について個別研究をおこなう。両角は,独自に収集したグループホームのアンケート調査をもとに,グループホームのサービスの質と認知症患者の要介護度の関係について分析した。湯田は,独自に収集した国保財政のデータをもとに,運営費用を決定する要因を分析し,保険の運営に規模の経済が働くかどうかを検証した。
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