研究概要 |
(1)人口変動の影響に関する研究 財政システム班(岩本・福井)は,引き続き人口変動が医療・介護保険財政に与える影響を分析するために,長期の医療・介護費用と国民所得を予測する医療・介護保険財政モデルの改良をおこなった。 今年度は,公費負担の推計精度を高めるとともに経済前提の直近への変化を織り込んだ改訂版を作成し,費用負担の将来予測をおこなう論文を発表した。 論文では,医療・介護費用に対する公費負担は,2007年度から2025年度までGDPの1.8%増加することが示された。2025年度から2050年度にかけて,公費負担は医療がGDPの1.25%,介護が1.05%増加すると推計された。また,2050年度以降も約20年間にわたり,公費負担総額は上昇を続ける。後期高齢者に重点的に公費が投入されていることから,公費負担の伸び率は保険料の伸び率よりも高いため,税による財源調達がより困難になることが予想される。したがって,給付と負担の関係が相対的に明確な保険料での財源調達の余地を大きくし,公費負担の比重が小さくなる方向への改革を検討する必要があることが示唆される。 (2)医療・介護サービスの効率化・改善に関する研究 財政システム班と提供システム班(両角・湯田)は,医療・介護サービス改善のための課題について個別研究をおこなった。両角は,独自に収集したグループホームのアンケート調査をもとに,グループホームのサービスの質と認知症患者の要介護度の関係について分析した。湯田は,独自に収集した国保財政のデータをもとに,運営費用を決定する要因を分析し,保険の運営に規模の経済が働くかどうかを検証した。
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