研究概要 |
平成21年度は平成20年度に行った研究(国の補助が地方の生活保護率に与える効果・生活保護の財源不足率の算定)を引き続き検討するとともに,それらの成果を幾つかの学会・カンファレンスで発表した.国の補助が地方の生活保護率に与える効果に関する論文は,日本経済学会春季大会,日本応用経済学会(推薦講演),ドイツでのコンスタンツ大学での国際カンファレンスで発表した.ここでは国の補助が地方の生活保護率に影響を与えていなかったことが明らかになった.生活保護の財源不足率の算定については,日本地方財政学会,および第8回現代経済政策研究会議(関西社会経済研究所)で発表した.ここでは生活保護財源が逼迫する自治体が存在する一方で,当該財源に余裕がある自治体もかなり存在することが明らかになった.なお,財源不足の要因については分位回帰を用いて分析しており,その結果は22年度の日本応用経済学会で発表する予定である. 平成21年度に開始した生活保護に関連する新たな課題として,生活保護行政における「底辺への競争(福祉の切り下げ)」に関する実証分析と「就学援助」に関する実証分析を行った.前者に関してはデータ整備のみの基礎調査の段階で,その成果は平成22年度を待たなければならないが,その過程で得られた情報は参議院事務局による『経済のプリズム』で発表した論文に活かされている.この論文では,入手が難しかった生活保護にかかる市単位のデータを整理・分析し,いままで行われていなかった,市単位での生活保護の実情を細かに概観した調査資料となっている.後者の生活保護受給者をも対象にする就学援助については2005年の国庫補助廃止が地方の就学援助に与える影響を実証分析している.国庫補助の廃止は地方の就学援助を大きく後退させたという推定結果を得ており,それは平成22年度の日本経済学会で発表する予定である.
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