研究概要 |
本研究では、ネット取引の全貌を明らかにするとともに、ネット取引が株式市場に与える影響について分析を進める。この分野の研究として、広く知られた報告としてBarber and Odean (2001, 2002)らの分析が挙げられる。彼らは、アメリカ市場における個人投資家の取引データを使って、行動経済学で指摘されているような「自信過剰」「損失回避」が個人投資家の投資行動に観察されるとのことを報告している。果たして、日本での個人投資家の行動はアメリカのそれと似通ったものであろうか。日本でこの分野の本格的研究は手つかずの状態にあり、本研究の学術的意義は非常に大きいと考えられる。さらに、本研究は個人投資家に焦点をあてたものとなっていることから、日本における個人投資家への投資教育のあり方についても貴重な示唆を与えるものであり、その意味で、実務的な観点および教育的な観点からも、その重要性は高いと思われる。 本研究では、個人投資家のネット取引にどのような行動パターンがあるかを解明することを目的とする。分類すると、目的は以下の4点に絞られる。 (i)行動経済学で知られている人々の行動特性がどのように個人投資家の投資行動に反映されているか、(ii)株価データで知られているいろいろなアノマリーが、個人投資家のネット取引とどのような関係があるか、(iii)非合理的投資家である個人投資家が、ネット取引を通して市場で生き残る可能性、(iv)非合理的投資家の投資行動と株価の関係。これらの項目に対し、本研究の目的は、多様な角度から検討を行い、分析を進めることにあった。 ネット取引に焦点をあててはいるものの、非合理的投資家としての個人投資家の投資行動と株価の関係を明らかにすることが重要課題と考えている。
|