研究概要 |
(1) 情報の主観的価値の理論分析を行うための基本的なフレームワークは「期待効用理論」であり,その妥当性を検証するための実験手法はいくつか提案されているが,そのいずれも「くじ」の選好関係の含意を検討する間接的なものであった.我々はより直接的に主観的確率を計測する実験手法を開発し,その実験を実施するとともに理論的背景を検討した.これは従来,実験的には不可能とされていた画期的な計測手法の開発であり更なる精緻化を目指した. (2) 上記の実験的フレームワークのもとで,情報の提示方法が主観的確率に対してどのような影響をもたらすのかを検証した.また情報の精度や所得コストが投資におけるherding行動(他の投資行動に追随する行動)の発生とどのような関係にあるのかも実験的に検証した.特に,投資情報の取得コストは合理的な投資を行うために極めて重要な要因であることが確認できる一方で,そのコストは金銭的なコストに限定され,心理的,時間的コストについては明確な影響を見出すことはできないことも明らかにした (3) 金融の産業組織論的分析として主に以下の2点を中心に研究し成果を得た:限界費用が異なるノンバンクからなる消費者金融市場において,参入・退出を考慮した長期均衡でノンバンク数が社会的厚生の観点から過剰であることを証明した(「金融市場における過剰参入定理」).いま一つは、消費者金融市場においてノンバンクが資金調達をする上流市場の競争の程度が下流の市場の長期均衡におけるノンバンク数に与える影響を検討し,上流の企業数が少ない場合には下流のノンバンクの参入が過少になるという結論を得た
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