研究概要 |
平成22年度までに得られた成果を踏まえて、平成23年度はこれまでめ研究成果全体の取り纏め作業に着手するとともに、残された計画項目に取り組み、以下の成果を得た。(1)労務管理史における女性・少年および移民に関する問題発見が、成人男性労働者の「熟練の再定義」過程と、労働力の代替可能性や訓練の記述可能性の両面で関連した現象であるとの仮説を実証するとともに、(2)職業世界と密接に関係する「生活世界」を再構成するために必要な論点を、人間観、人的資源形成、労働市場の面から抽出した。(3)労務管理を成立させている諸要素を、フェーズ・時代・地域を越えて一般的に記述する事をこころみ、併せて比較労務管理史の基準を、職業世界に対する経営者および技術者の問題発見の経路の問題として仮設するにいたった。 この成果によって、時代・地域を異にする労務管理現象の比較が従来は半ば恣意的な基準によってしかなされえなかったのに対して、本研究は比較研究のための方法的基礎を構築し、今後の労務管理史、より広くは、産業社会の歴史研究の可能性を拡張することに成功した。 これらの成果は研究代表者・分担者、連携研究者(市原博、榎一江、木下順、清水克洋、関口定一、松田紀子)、および海外協力者(Catherine Omnes, Bobbie Oliver)らとともに『労務管理の生成と終焉(仮題)』として刊行することを計画しており、また2012年度以降の「熟練」の可測性・記述可能性に関する総合的歴史研究にも応用される予定である。
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