研究概要 |
研究実績の概要;本研究は、科学型イノベーションに関与する一連の組織がどのような研究能力を持ち,どのように連携を進めることによって知識を生成・移転しイノベーションを促進しているか,ビブリオメトリックスを利用して実証研究し、企業のイノベーション戦略への含意を明らかにする。平成21年度は、アドバンスト・マテリアル分野(光触媒)を対象として、卓越した研究業績に加え高いコンサルティング能力を持つ大学・公的研究組織の学者を、その特許出願実績の高さ、加えて、科学論文出版実績の高さに注目して「パスツール型科学者」と定義し、産学連携によって他の科学者と比較して同タイプの科学者の研究生産性が顕著に増加することを明らかにした。研究成果はAcademy of Management 2010年年次総会(モントリオール)等において発表予定である。バイオ医薬分野に関しては、抗コレステロールの特効薬であるスタチンの開発を例にとって、日米企業2社の比較分析を行った。その結果、新物質による創薬をbreakthroug innovationと概念化し、企業が画期的な新薬を上市するためには、従来指摘されてきた個別研究者/企業の保有する能力には限界があることを明らかにした。高リスクを伴う新薬をいち早く承認し製品化するためには、一国のイノベーションシステムによって形成される産学官に渡る強固な社会資本と、新薬の可能性を積極的に追求するプロアクティブな認識の社会的共有が不可欠となる。創薬に関するイノベーション政策の重要性を指摘した同研究は、Research Policyによって採択され、近日中に公刊される。
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