研究概要 |
本年度は,当研究プロジェクトの初年度にあたり,今後の新しい「日本型HRMシステム」を構成する要素は何であるかについてまず検討を加えた。その結果,とりわけ昨今,日本企業の経営実践において焦眉の課題となっている「ワーク・ライフ・バランス」(以下WLB)の内実や今後のあり方について詳細に検討する必要があることがわかった。WLBに関し,複数の日本企業の人事担当者に対しヒヤリング調査を実施したところ,WLBの概念規定が各社各様であり,女性の活躍支援を中心にWLB施策に取り組んでいる企業もあれば,全従業員を対象に残業の削減や多様な働き方の導入等の,WLB施策を導入しようとしている企業も存在していることが明らかとなった。但し,全般的な趨勢としては,施策導入初期の女性活躍推進を中心とする施策から,次第に全従業員の働き方を対象とする施策へと重点を移しつつある現実が明らかになった。さらに,職場での従業員の働き方それ自体(職務内容における自律性,仕事のおもしろさ等)とWLB施策を結びつけて導入・施行しようとする企業も,少数ではあるが存在していることが明らかとなり,これらは,いわゆる「日本的経営」とうまく合致させながら当該施策を導入しようとしていると理解されることから,当該パターンを「日本型ワーク・ライフ・バランス」と命名し,今後,我が国で推進が期待されるモデルと位置づけた。 また,次代を担う大学生がWLBに対しどのような意識を持っているかに関するアンケート調査を実施し,その結果,従前であれば東京勤務を厭わない大学生(とりわけ男子大学生)が多くみられていたが,昨今では地元で就職を志願し,地域に密着しつつ自分なりのライフスタイルの設計が可能かどうかという点が,就職する企業を選択する重要な選択肢になりつつある実態が明らかとなった。
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