研究概要 |
日本型HRMシステムの構成票件の一つであるワーク・ライフ・バランス(work-life balance)についてとりわけ(1)ワーク・ライフ・バランスの概念規定やとらえ方,(2)各企業がワーク・ライフ・バランスへ取り組むようになった契機や経緯,(3)ワーク・ライフ・バランス推進へ向けた具体的取組み,(4)取組みの成果,に焦点を当てて検討を行なった。また,日本企業に適した形態でのワーク・ライフ・バランスの導入施策について考察した。その結果,日本企業においては,欧米企業に比して,とりわけ各従業員の職務内容を考慮に入れたワーク・ライフ・バランス施策(「ワーク・ライフ・インテグレーション」)が有効であることが明らかにされた。 また,日本型HRMシステムの特徴を明らかにすべく,経営組織の環境適応的側面と内部管理的側面とに大別し,前者の例として情報技術革新への対応について検討を加え,後者の例としてトリスト(E.L.Trist)らの社会-技術システム論に於ける発想法と日本型発想法の相違についても検討を加えた。その結果,企業経営における経済性志向と社会性志向との関係のあり方が,欧米企業と日本企業とでは原理的に異なっている可能性があることがわかった。すなわち,欧米企業では,経済性と社会性の関係が基本的にトレードオフ(相殺関係)として捕捉されやすいのに対し,日本企業においては,必ずしもトレードオフとしてではなく,両者間の関係性を論理として把握しない(つまり,両立しうる可能性をもつ)傾向にあり,この根本的な捕捉方法の異同が,日本と欧米間の経営システムの相違として各局面に影響を及ぼしている可能性があることが明らかにされた。
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