平成20年度は、シティホテルを中心にヒアリング調査を実施した。その結果、ホテルによって、ブランドの捉え方が異なることや、多店舗展開のホテルと単店舗のホテルではブランドの役割に対する期待が異なることが明らかになった。さらに、観光地のホテルでは、地域のブランドとホテルのブランドが2重構造を形成しており、一体としてブランド戦略を考える必要があることも明らかになった。 また、過去に実施した医療サービスの調査結果をブランドの視点から再分析することで、医療サービスでもブランドが顧客の品質評価や満足に影響を及ぼすことが明らかになった。医療サービスは専門サービスであるとともに、便益遅延型サービスである。便益遅延型とは、サービス・デリバリーが終了した時点では便益がまだ十分に発現していないものである。したがって、便益遅延型専門サービスの消費では、顧客は選択過程で、専門的知識の欠如のためにどのサービス組織が高い品質のサービスを提供してくれるのかを評価できないだけでなく、デリバリー終了時点でも、享受した便益が十分なものであったかどうかを評価できない。このような評価の困難性を伴う場合、高いブランド・イメージは顧客のサービス組織に対する期待を高めることで、選択可能性を高めるだけでなく、高められた期待がサービスの成果に対する評価を高い方向に歪めるために、品質評価や顧客満足も高めることになる。さらに、サービスのデリバリーはサービス組織(従業員)と顧客の協働によって行われるが、高いブランド・イメージは顧客のデリバリー・プロセスへの積極的参加と協働を促すことになる。顧客による積極的な協働の展開は顧客の享受するサービス品質を高めるために、高いブランド・イメージのサービス組織ほど高い品質や顧客満足を達成しやくなるし、このことはさらにブランド・イメージを高めるという好循環を形成することになることが明らかになった。
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