平成21年度に実施したホテル従業員を対象とした量的調査の結果を詳細に分析することで、サービス・ブランドの従業員に対する効果モデルを構築するとともに、そのモデルを検証するための量的調査を再度実施した。その結果、所属するホテル・ブランドに対するポジティブな評価は彼らの組織コミットメントや職務意欲に対してポジティブな影響を及ぼすことが検証された。サービス組織のマーケティングにおいては、従業員の活動や態度がブランドが約束するサービス品質の実現や顧客満足の向上に重大な影響を及ぼすことから、従業員の満足向上や組織内の情報共有を図るインターナル・マーケティングの実施が強調されるが、これと同様な効果はブランド構築のマーケティングによっても得ることができる、すなわちブランド構築はインターナル・マーケティングを代替できることが明らかになった。 また、サービス・ブランドの顧客に対する効果を明らかにするために、サービス組織の経営者や従業員、顧客を対象として質的調査を実施した。その結果、サービス・ブランドは当該サービスに固有の消費文化として、従業員だけでなく顧客のデリバリー・プロセスへの参加の適切化を図る装置の一つとなることが明らかになった。また、サービス・ブランドに固有の消費文化が差別的かつ魅力的に構築されることで、ブランド・コミュニティが形成されるが、これは当該サービスの消費にかかわるコンテストの共有を促すことから、ブランド・コミュニティ内は高コンテキスト文化であることも明らかになった。さらに、サービス・ブランドを固有の消費文化として捉えることで、その構造は多層構造(平等社会を基盤に生まれたサービスは、サービス・カテゴリー特定的文化、地域特定的文化、およびブランド特定的文化の三層構造、階級社会に基盤に生まれたサービスは、この三層にさらに階級特定的文化が加わった四層構造)であることを提案した。
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