平成20年度は、都市の経験価値に関する文献収集と尺度作り現地調査の準備(資料収集、調査日程の策定)、海外現地調査の実施、海外現地調査のデータのまとめ、データ分析とマッピングの作成、報告書のまとめを行った。 国内外の都市デザインの動向を探ると共に、経験価値の視点から、それらの都市を評価し、類型化するため「都市デザインのブランド化」について、成功例として考えられる欧州の都市について実地検証を行い、「都市デザインのブランド化」に必要な要素の分析を行った。具体的には欧州でデザインを積極的に都市の構成要素としている国際的に評価の高いフランス・パリ市およびナント市、ドイツ・ミュンヘン市、イギリス・ロンドン市を対象に文献収集、事前調査を踏まえ直接現地でのフィールドワークを実施した。パリ市においては都市ブランドの構成要素として美術館および博物館の高度利用と、それを具現化するためのミュージアムのネットワーク化などを中心に調査を行った。ナント市では都市計画の方向性を市民に対して明確に提示していく仕組み作りと交通システムとを主に調査を行った。ミュンヘン市では基幹産業である自動車産業と都市との関連、およびそれらを利用した都市における産業観光の在り方を実地調査し、最近ドイツ全土に点在していた産業的文化資産としての工業製品を集中することで再構築されたピナコテーク・モデルナ(現代美術館)での展示内容とその在り方の調査を行った。ロンドン市では、市内のメインの文化拠点とサブ拠点および、メインの商業拠点とサブの拠点の面的展開の計画を実地調査した。これらは、都市の独自性を打ち出し、国際的に評価されるようなブランド力のある都市を目指していく様々な手法等が、外からどのように評価されるかという視点により都市における感性価値創造の実態を明確化するためのものである。
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