研究課題
イノベーションは、オーソドックスな理論では、新しい要素の結合によるシステムの上位移行と定義される。ここから中小企業がイノベーションを促進するためには、取引関係の変化、つまりポジションの変化が、新しい要素の結合を可能にすると予測できる。ところが、中小企業は事業の安定化のために、しばしば、大企業や他社との長期安定的な取引を志向するので、このポジション変化が容易に起こらない可能性がある。さらには、大企業は、しばしば取引構造を固定化させ、部品供給会社にポジション変化をさせないでおこうという立場を採用する可能性がある。こういった条件は、取引を制度化させることになる。この制度化は、要素の固定化を意味することになり、イノベーションの条件である新要素の結合の障害になる可能性が高かった。しかし、昨今の経済状況が、中小企業のポジション変化を促していることをわれわれは事例研究で突き止めた。われわれが取材した革新的な中小企業は、オープン・イノベーションの先駆けとなるような関係管理を行っており、その戦略がポジションの変化を促進している。ここでいうオープン・イノベーションとは、大企業が外部の資源を活用し、イノベーションを促進する経営活動である。われわれの調査では、オープン・イノベーションは大企業の外部資源活用にとどまらず、中小企業こそ、大企業の資源を積極的に活用しながらイノベーションを促進しているのである。この際、当初は、大企業のオープン・イノベーション戦略が実現していると想定されるのであるが、それが意図せざる効果として、中小企業のイノベーション能力を向上させ、大企業の中小企業に対する依存度を高めることになっていることがわかった。
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巻: 5(digital edition) ページ: 1-6
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Proceedings of the 18th Annual Conference on Marketing and Business Strategies for Central & Eastern Europe
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