研究概要 |
本研究は,技術受容モデル(Technology Acceptance Model)を応用し,ネットワーク外部性を有する新製品の普及に関する概念モデルの構築と実証研究を行なうものである。 初年度である2008年度は,主にゲーム産業を中心に,据置型ゲーム機の普及要因について定性的・定量的な研究を行い,技術受容モデルの主要な構成概念(知覚された有用性,使いやすさ)との相互関係,消費者間のクチコミや相互観察といった消費者変数,企業によるプロモーションといったマーケティング変数を取り入れた概念モデルの構築を試みた。 これと平行して,近接分野の文献サーベイを行い,クチコミのうち,伝統的なクチコミ(WOM)と電子的なWOM(e-WOM)のそれぞれを同時に概念モデルの中に取り込む可能性を探った。また,普及という概念について,製品を購買するだけでなく,購入した後の使用という次元に注目する必要があることを発見した。とりわけ,ネットワーク外部性を有する製品の場合,補完財を購入し続けることが製品システム全体の発展につながる。このことから,構成概念の中に購入後の使用という要素を入れることになった。 2008年度の後半は,以上のような定性的・定量的な探索的研究と文献サーベイに基づき,海外共同研究者のマーク・E・パリー教授とも議論しながら,概念モデルの開発を行った。また,質問票調査の準備を行い,対象製品として,携帯型ゲーム機,携帯電話(スマートフォン),ブルーレイDVDの3つを選定した。 その後,先行研究から既存の尺度を収集し,各製品に適切な表現に修正した後,パリー教授とともに日英の双方向翻訳を行ったうえで,研究分担者の岸谷,竹村がプレテストに参加し,尺度の精緻化を行った。そのうえで,今後3年かけて行なう時系列調査の第1回目として,消費者639名からデータを収集し,分析を行なった。その成果は,2009年5月の日本商業学会全国研究大会,同6月のINFORMS Marketing Scienceに受理され,報告予定である。
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