本研究の目的は、現代社会における祖父母世代とその子世代(孫の親世代)との関係を、「世代間の育児支援」を軸として明らかにすることである。平成20年度は、研究計画に従い、国内において『「世代間の育児支援」の日本的特質に関する実証的研究』をおこなった。具体的には、都市部と過疎地域を比較するために、北海道・旭川市(人口約30万人)と北海道・名寄市(人口約3万人)において保育機関・学校調査を実施した。旭川市では、5保育所、2幼稚園、7小学校、名寄市では、5保育所、5幼稚園、10小学校において配布調査をおこなった。調査では、子どもの保護者と保護者の親世代(祖父母世代)を対象として、同一家族内の祖父母世代とその子世代の育児支援関係を具体的にとらえることをねらった。また、小学校調査では児童本人にも「孫の視点からみた祖父母」を問うた。保護者票1000余、祖父母票800余、子ども票500余を回収した。 その結果、共働きや、離婚によるひとり親家庭などにおいて、公的支援が十分にとどかない部分を担う存在として、祖父母世代が重要な役割を果たしている例がみられた。しかし、その一方で、就業や社会参加をする祖父母や、子世代と遠く離れて暮らす祖父母も多く、育児支援のやりとりが困難な例もみられた。 現在、データ分析を進めているところである。今後、祖父母とその子世代それぞれの多様な条件・環境(家族構成、経済的条件、職業や働き方、居住地域、パートナーとの関係、友人や地域のネットワークなど)に即した分析を深めていきたい。
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