本研究の目的は、現代社会における祖父母世代とその子世代(孫の親世代)との関係を、「世代間の育児支援」を軸として明らかにすることである。平成21年度は研究計画に従い海外調査を行った。目的は日本との比較検討をするために、スウェーデンにおける「世代間の育児支援」の現状を探ることである。具体的には、首都ストックホルム市とエステルスンド市(人口約6万人)において保育機関調査を実施した。両市において、コミューンの保育所担当部署の職員への聞き取り、3種類の保育所(民間・コミューン・協同組合)における聞き取りと配布調査((1)保育所の所長を対象として保育内容をたずねるもの、(2)保育所の職員を対象として職員からみた通所児の家庭や世代間の育児支援状況をたずねるもの、(3)保育所の職員を対象として職員個人が経験した世代間の育児支援を問うもの)を行った。保育所票6、職員からみた世代間関係票6、職員自身の世代間育児支援票41を回収した。その結果、公的な育児支援の体制が日本に比べてはるかに充実しているといわれるスウェーデンにおいても、祖父母が頼られる場面が少なからず存在すること、しかしながら、祖父母、特に祖母の就業率が高く、子世代と遠く離れて暮らす人々も多いために、祖父母世代への過度の期待はされにくい実態が確認された。聞き取り内容と回収票の翻訳作業を完了し、現在は、これらのデータの分析を進めているところである。また、平成20年度実施の国内調査の追加調査として、当該調査の回答者である祖父母の一部を対象とする配布調査「世代間の育児支援の実態と意識に関する調査」を行った。この調査では、前回調査をふまえながら、祖父母による育児支援がどのような成果や問題を示しているのか、また祖父母の生活や考え方にどのような影響を与えているのかを自由記述中心に問うた。29票を回収し、前回のデータと併せて分析中である。
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