研究概要 |
内容分析に関しては,新聞・雑誌のデータ・ベースを利用して劣化言説に関する記事をジャンルごとに収集し,その傾向を把握した上で分析基準を対象となるメッセージの分析枠組みを設定した.その結果,経済と教育および若者といったジャンルでの言説について検証を行うことを調査方針とした.同時に既存の日本人論や日本文化論との関連性や共通性について理論的に検証を行った. また,こうした劣化言説の流通が,受け手において言説としてどのように消費されており,個々にとってどのように意味づけられているかについて検証する作業として,日本社会との比較を念頭に,韓国における教育言説の流通および消費状況について調査を行った.日本社会の劣化言説については,全国20代から70代の1000サンプルを対象に,質問紙による計量的な把握を目的としたサーベイを行った.調査項目については,上記の内容分析の結果をもとに,経済と教育および若者に関する意識のほかに,環境や食に対する意識が,具体的な社会に対する不安意識や劣化についての意識とどのような関係をもつのかを焦点に設定を行い,データを収集した. 一方,比較調査にあたっては,特に韓国社会の「教育熱」という現象が,社会に対する意識とどのような関係性をもつのかにについて,文献資料による検証と,一般家庭に対する訪問調査を行った. 以上の調査結果を照合しながら,次年度に向けて,日本社会における劣化言説の具体的な消費状況を把握するための聞き取り調査とともに,言説の送り手である製作者の調査についても研究計画を検討した.
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