本研究は、ニューヨーク市のコリアンタウンを取り上げ、韓人移民社会がどのように形成されてきたのかを、とくに華人社会との民族関係に焦点をおいて検討したものである。現在、ニューヨーク市において代表的なコリアンタウンとして、クイーンズ区のフラッシング地区が挙げられる。1990年代以降、フラッシング地区に韓人が商店街を形成しはじめ、2007年現在約30万から40万人の韓人が居住するようになった。2000年以降になると、フラッシング地区に台湾や中国などの華人系の商店が進出し、韓人の商店はフラッシングの中心から郊外へ拡散する傾向がみられている。フラッシング地区の韓人社会と華人社会は、アジア系移住者という立場から、一方では経済的な競争関係を持ちながら、他方では主流社会に対しての政治的な統合を模索するという選択的な民族関係を形成しているといえる。このフラッシング地区にみられるローカルな場での選択的な民族関係の形成をニューヨーク市という世界都市の新たな地域構造の構築過程と捉えることができる
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