本年度の研究目的は、1)ニューヨーク市のコリアンタウンにおける韓国系移住者が中国朝鮮族との民族関係、2)奈良県における在日韓国朝鮮人の民族関係、3)韓国の地方都市における外国人との共生関係の3つの多文化共生関係を比較社会学的な視点から移民の定着の意味を考えることである。 1) ニューヨーク市の中国朝鮮族はコリアンタウン内にキリスト教会をもっているが、中国朝鮮族の牧師さんは韓国系の牧師や韓人会と協力関係をもっていた。中国朝鮮族は韓国人と文化的な相違をもちながらも、宗教組織のネットワークを通じて韓国系と共生関係を形成している。 2) 奈良県の在日韓国人の民族関係は、コリアンタウンといった集住地がなく、近隣に住む韓国人どうしの共同体が存在している。奈良県の夜間中学は在日韓国人どうしの民族関係と他の外国人との共生関係を形成できる多民族共生の場となっていることがわかった。 3) 韓国の地方都市における外国人配偶者は、地方自治体の韓国語教育を受けながら、地域社会において夫などの家族関係を基盤として、韓国社会に定着している。 以上を踏まえてみると、同じ韓国系移住者といっても受け入れ社会の民族関係や言語教育の有無などによって、民族的コミュニティの形成が異なっているといえる。今後、受け入れ社会の相違に伴う韓国系移住者の定着を移住者個人の生活史に注目して比較していくことが求められる。
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