今年度は今までの米国における韓人と中国朝鮮族の民族関係の調査を踏まえて、1)韓国社会における外国人コミュニティ(特に中国朝鮮族)、2)日本社会における在日コリアンと新来韓国人に関する2つの実証調査を行った。その結果、韓国社会においては、外国人住民のなかで、中国朝鮮族の占める割合が最も高く、言葉の不便がないこともあって、中国朝鮮族はサービス業や建築業などの職種で働いている。中国朝鮮族の集中地域は拡大しており、彼ら・彼女らへの公共サービスとして「グローバルセンター」という公共的施設が増えつつある。日本社会においては、とくに奈良県に限ってみると、以前在日コリアンが日本語教育を受けた夜間中学という場において、同じくニューカマー外国人も日本語を学んでいる。在日コリアンを引き受けた夜間中学はその蓄積をもとにして、ニューカマー外国人を引き受けている。夜間中学は外国人住民が日本社会に適応できる共生の場として機能していることがわかった。 以上のような日本と韓国の現状を米国と比較すると、米国の特徴外国人移民へのサポートを「福祉」という視点で捉えていることである。米国の移民者は自分たちの福祉を移民者同士の団体を通じて、守っているのである。米国では人種を越えた移民者同士のネットワークが多様に展開しているといえる。この点を踏まえてみると、今後日本社会においても外国人同士の民族関係がより複雑に展開していくことが予想される。
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