(1)研究の目的 この研究は、経緯として韓国系移住者のエスニック・ビジネス起業研究から派生したものであり、在米コリアンと在日コリアンの比較する視点から、移民が定着するために戦略的にどのような民族関係を求めているのかを移住者個人のニーズを中心にみていく必要がある。 本研究は、以上の問題意識にもとづいて日本の地方都市と米国のニューヨーク市のコリアンタウンに焦点を当てて、とくに中国朝鮮族の流入に伴い在日コリアンと在米コリアンの民族関係がどのように再編していくのかを実証的に解明することを目的にしている。移民先進国である米国の知見を用いて、21世紀の日本社会の多民族共生社会が可能な条件を示すことを目指している。 (2)研究の課題 そのため以下のように研究課題を設定する。 (1)民族関係の実態を在米コリアンに関わる「Middleman Theory」という民族関係の視点から分析する。それを通じて、受け入れ社会別で多様に展開する韓国系移住者の民族関係の変容とその社会的機能を分析する。(2)ニューヨーク市のコリアンタウンに定着する中国朝鮮族が在米コリアンと華人社会とどのような民族関係を形成するのかを明らかにする。(3)日本の地方都市として名古屋市や奈良県を取り上げて、在日コリアンと中国朝鮮族とニューカマーの韓国人の3つのエスニック集団の共生関係を明らかにする。(4)米国と日本と韓国に展開する移住者のネットワークをトランスナショナルなネットワークの関連で、国境を越えるネットワークの意味を明らかにする。 (3)研究の内容 在日コリアンと在米コリアンの形成と展開過程を把握しつつ、日本・米国・韓国において以下の内容の調査研究を行う。 (1)第1年次は予備調査を通じて、米国のコリアンタウンについての各種データを収集すると共に、聞き取り調査を実施する。(2)第2年次は米国のニューヨーク市のコリアンタウンの移民組織の現況と特質を移民歴史やアジア系移民の共生関係の関連で明らかにする。(3)第3年次は、米国のニューヨーク市の中国朝鮮族とコリアンとの民族関係の再編を重視した現地調査を実施する。(4)第4年次は最終年次であり、補足調査などを実施して本研究の完成度を高める。
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