3年間の研究期間の第1年目にあたる平成20年度は、「統合的ケア」が新しいケアの方法として議論され、研究が活発になった文脈を、それに先立つケア改革やコミュニティ・ケアの動きの隘路が何であったのか、そして、「統合的ケア」はどのような意味でパラダイム転換の可能性を伴うものであるのか、という視点から整理することを課題とした。その際、「統合的ケア」については、基本的な研究動向・政策議論に関する文献データベースが比較的未整理であるので、まず、基本文献の収集から着手することとした。これについては、「統合的ケア」を分析的に取り扱った英文著作36冊、和文著作3冊、和文報告書5冊、和文雑誌論文31冊、加えて、EU第5次枠組みプロジェクトに関連して実施された「統合的ケア」のプロトタイプ構築にかかわる2つの主要な研究開発ネットワーク事業であるCARMENとPROCAREから生み出された研究論文、コンセプトペーパーなど81本、イギリスの「統合的ケア」研究ネットワークであるCSIPの主要なコンセプトペーパー8本、欧州健康マネジメント協会(EHMA)の「統合的ケア」基本政策資料3本、それに、『国際統合的ケア雑誌』に掲載された「統合的ケア」の基礎理論構築に関連する主要論文27本を収集することができた。また、2008年7月と2009年1月に、フィンランドの健康社会サービス関連のイノヴェーション機関であるSTAKES(現在はTHL)、SITRA、Finpro、Tekesを訪問し、EU「統合的ケアのプロトタイプ開発にモデル事例として参照頻度の高い「統合的ケア」の地域モデルについて、その基本コンセプト、ナショナルな政策との関連性、助成支援の方針と基準などについて、ヒアリング調査を実施した。加えて、HSE、Laurea、Lahti、Tampereの各大学の関連研究者とのワークショップならびに特徴ある包括的デミュニティ・リハビリテーションを開発してきているGeroCenterとのワークショップなどを開催し、「統合的ケア」の文脈について、幅広い意見交換を行った。
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