平成21年度は、「統合的ケア」の要素理論分析を進めるという当初計画に沿って、(1)ケア職務能力の再編成と「統合的ケア」構想との関連、ならびに(2)ケアサービス提供システム改革戦略としての「統合的ケア」の射程の検討を行った。その際、先行研究・関連研究との関連付けと並んで、国際的な専門家たちとの意見交換を重視した。(1)については、ケアの考え方として、予防健康段階からターミナル・ケア段階までの包括的・継続的ケア(わが国では一般に「地域包括ケア」)が主流になる中で、それを支える専門職能連携の改革動向について検討した。とりわけ、地域包括ケアの主要な領域である医療と介護の連携ならびに相談支援サービスとケアサービスとの一体的運用に焦点をあてて、看護技能と介護技能の統合化ならびにソーシャルワークとケアワークの一体化について、理論動向と先端的実践事例の動向を整理した。(2)については、とくに欧州で台頭している新しい社会・技術イノベーションの方法論であるLiving Lab Driven InnovationまたはUser Driven Inhovationの方法体系をケア・システムの改革構想としての「統合的ケア」に応用する道筋について、検討作業を行った。
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