全国約8000の高齢者施設に、外国人介護職員の雇用に関するアンケート調査を行い、またフィリピン系介護職員に対して聞き取り調査を行った。そして、これらの調査結果を用いて外国人介護労働者受入れの全国的動向と在日外国人の介護労働の実態を分析調査した。 1.高齢者施設における外国人介護労働者の就労状況についてのアンケート調査 全国約8000の高齢者施設に対してアンケートを配布し、約2800通(35%)の回答を得た。有効回答のうち、約15%の施設がこれまでに在日外国人を雇用した経験があった。そして現在雇用を継続しているのは、有効回答のうち約5%であった。 雇用形態を見ると、非常勤職員としての雇用が多く、1都3県では人材派遣会社を通した雇用であった。また、夜勤および介護記録を自分で執筆している人はわずかであった。本調査では、介護現場で働く在日外国人が既に一定数いることが判ると同時に、在日歴が長い人々でも、介護現場で日本人の常勤職員と同じ働きをしていないことがわかった。 2.介護現場で就労するフィリピン系介護職員に対する聞き取り調査 65名の在日フィリピン人に対して、約1時間の聞き取り調査を行った。質問項目は主に(1)基本的属性(年齢・来日した理由・介護に関する資格の所持)(2)介護現場での就労上の困難(3)介護現場での就労に必要な専門用語の理解度などであった。 聞き取り対象者は、日本語と全く異なる文法および表記体系を持つ言語が母語であり、また、日本での生活経験が十分でないため、今後経済連携協定(EPA)に基づいて来日する人々と似た属性を持っている。従って本調査を通して、今後介護福祉士候補として来日する外国人が介護現場で就労する上での課題を明らかにすることができた。
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