経済連携協定(EPA)によってインドネシア・フィリピンから介護福祉士候補生を受入れている117介護施設に対して、(1)介護福祉士候補生を受入れた理由、(2)今後の受入れ予定の有無についてアンケート調査を行うと共に、受入れ施設を訪問し聞き取り調査を実施した。候補生を受入れた理由は当面の介護人材不足もあるが、(1)国際交流・国際貢献、(2)将来の外国人受入れの準備、(3)職場の活性化等であった。今後の受入れ予定については消極的な回答が多かった。また在日外国人を雇用したことのある高齢者施設に対して聞き取り調査を行うと同時に、在日外国人を介護職員として養成し、高齢者施設等へ派遣している事業者の調査を実施した。 我が国を含め東アジア諸国は、急速な高齢化のため、外国人介護労働者の導入が避けられない。今年度の調査結果を踏えてまとめると、避けられないのであれば、国の受入れ施策に従ってテストケースとして受入れ、関係職員・施設が外国人に慣れるようにするのが適切である。同時に3~4年間確実に就労を継続する介護職員が確保できることは介護保険施設にとって有益であり、国際貢献として位置づけ、社会福祉法人の社会的使命も果たすことができる。一方で、受入れに係る経済的・人的負担が大きい、国家試験合格の見通しがたたない、介護現場での指示が伝わらない等の課題もある。また、高齢者施設は在日外国人介護職員を継続して雇用したがらない実態があるため、在日外国人介護職員の養成を行っている事業者は、介護教員による指導法の開発、就労後の支援システムの確立等の興味深い取組みを行っていた。 介護福祉士候補生の受入れは、我が国の今後の高齢者介護のあり方等について基本的な問題を提起していると考えられる。また文化的背景および日本語能力に違いがある在日外国人を介護職員として養成するシステムの確立は、今後の外国人介護職員の受入れに資することができると考えられる。
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