入所施設からグループホーム等地域の住まいへの移行を完全に成し遂げ、入所施設解体に至ったスウェーデンの制度面における特徴を明らかにし、地域移行の方法や支援のあり方、さらには、地域生活支援の実態を把握するために、まず、文献研究を行った。その結果、入所施設解体法やLSS(一定の機能障害者の援助とサービスに関する法律)などの法制度は、入所施設解体の実行と地域生活支援システムの構築に大きな貢献をしたことが明らかになった。 次に、スウェーデンの入所施設解体をいち早く成し遂げ他施設解体のモデルとなったカールスルンド(1988年閉鎖)に焦点をあて、同施設を管轄していたストックホルム北部福祉地区事務所の当時の責任者や関係者、解体プロジェクト代表者等に聞き取り調査を行った。その結果、地域移行の方法が判明し、入所施設解体に対する施設職員や保護者・家族の葛藤や心境の変化が明らかになった。 さらに、障害者本人が地域に定着し、地域住民として生活をしていくために必要な地域生活支援の実態を把握するために、カールスルンドを退所後地域の住まいで暮らす障害者本人への面接調査を5自治体で実施した。対象者が数多くの自治体に分散して居住し、しかも20年経過していたため、対象者を選定することが極めて困難であった。しかし、5自治体福祉担当者の協力を得て、20人の調査対象者を確保することができた。面接は各ホームで10月から1月にかけて行われた。その結果、調査対象となった障害者本人は、地域での対人関係の輪の広がりには限界があるものの、地域での暮らしに適度に満足し、安心して生活しており、福祉政策の成果を示す結果となっていた。 なお、上記結果は障害者の地域生活支援システムを構築していく上で支援法制度の充実と各自治体からの支援が欠かせないということを示しており、結果が示す意義は大きい。今後の継続研究が待たれる。
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