わが国(日本)における地域移行をさらに推し進め脱施設化と地域生活支援システム構築の方途を見出すために、地域移行を町ぐるみで受け止め支えている地域(北海道A市)、重度障害者の地域移行に積極的に取り組んでいる地域(神奈川県B市)を対象に実態調査を行った。実態調査は、現地調査、資料収集、面接調査を組み合わせて行った。面接調査には、グループホーム等地域の住まいで暮らす障害者82人(男42人、女40人)、および、支援スタッフ11人(男3人、女8人)が応じてくれた。面接調査の結果、一人ひとりのニーズにあった生活の場や就労の場、日中活動の場を確保することがまず必要であり、日常生活を充実させるために必要な余暇にはガイドヘルプサービスだけでなく、コンタクトパーソンが有効だということが明らかになった。また、入所施設はあくまでも通過施設であり、重い人たちこそ地域で一般の人たちと共に暮らすことが必要だと考える支援スタッフが大勢おり、こうした理念をもった人たちにより地域移行と地域生活支援が支えられていることが判明した。しかし、意思疎通の困難な重度の人たちに対する面接調査は難しく、新たな調査法の導入(例えば、行動観察法、センター方式の導入等)や開発などが求められていた。 対象となった2地域で貴重な数多くのデータを得ることができたが、今後これらを量的・質的に分析することにより、わが国における脱施設化と地域生活支援システム構築への展望を見出すことが可能となろう。国の政策に直結する可能性の高い研究だけに新法との関連でも分析を行っていきたい。
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