研究課題
子どもは2歳近くになれば、初めて出合った語でもすばやく的確にその意味を推論できるようになっている。本研究は、この効率よい語彙獲得メカニズムに注目し、1)それは乳児期においてどのように立ち上がってくるのか、2)いったん成立したこの学習メカニズムはその後どのように洗練されていくのか、を明らかにすることをめざしている。このうち1)の「助詞」プロジェクトでは、6,10,14か月の乳児を対象に実験をおこない、日本語を母語とする子どもは生後14か月までには、発話中の助詞を聞き取ることができているだけでなく、助詞は省略可能であることまで理解しているらしいことを見いだした。一方、2)の「オノマトペ」プロジェクトでは、ドンドンとトントンのような有声性において対比される擬音語ペアに注目し、このような尺アにおいて、有声音で始まる擬音語はより大きなモノがから出るより大きな音をヤ無声音で始まる擬音語はより小さなモノから出るより小さな音を指すことを、子どもはいつから理解しているのかを調べた。結果としで少なくとも4歳までに子どもは、「ドンドン/トントン」のような既存の擬音語ペアだけでなく、「ゾンゾン/ソンソン」のような新奇な擬音語ペアも、有/無声音を大/小の音に対応づけるルールを適用して理解できるようになっていることがわかった。ただし、4歳でまだ濁音文字が読めない子どもで、このルールを新奇な擬音語ペアに適用する率は、既存の擬音語ペアに適用する率より低かった。ここから、おそらく子どもは、既存の擬音語を耳にする中で、有/無声音で対比される擬音語は音の大/小に対応づけられることを学び、それが新奇な擬音語ペアにも適用可能な一般的な"感覚"になっていく上で、有声音と無声音を濁音の有無で対比させて表記するかな文字についての知識は一定の役割を演じていることが示唆された。
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