研究概要 |
本課題においては,1)子どもの語彙獲得メカニズムの成立過程(乳児期),2)その洗練過程(幼児期),を明らかにすることを目的として研究を進めてきた。このうち,1)乳児を対象とした研究では,これまで本研究課題で,日本の子どもは15か月になるまでに発話中で助詞は省略されることを理解するようになっていることが見いだされてきたことを踏まえ,今年度は,(1)同じ月齢の子どもが,助詞を手がかりとして,切れ目のない発話から隣接する単語を切り出すことができるかどうかについて検討し,「できる」との結果を得た。くわえて,単語の意味を理解する際に手がかりとなる情報として,表情や韻律など,言語外の情報に注目した研究もおこない,(2)2歳児は,通常耳にするのと異なるアクセントで単語が発話されるのを耳にしても単語表象にアクセスできること,すなわち,音素情報のみから意味へのアクセスが可能であり,したがって,単語表象へのアクセスにおいて,アクセントの役割は二次的と考えられること,(3)4か月の子どもが,既に,異なる人が示す喜びや怒りなどの表情を同種のものとしてカテゴリー的に知覚できること,などを明らかにした。2)幼児を対象とした研究では,これまでの知見(養育者はたとえば大きなモノから発せられる低い音の擬音語を話すときは特に低い声を使い,小さなモノから発せられる高い音をあらわす擬音語を話すときにはわざわざ高い音で話しかける,というように,擬音語の入力において音響的な"演技"をしている)を踏まえ,今年度は,養育者が擬音語入力においておおげさな"音響的演技"をおこなうことで子どもの擬音語理解が助けられているのかについて検討したが,養育者-子ども間では,明確な関連を見いだすことはできなかった。
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