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2011 年度 実績報告書

言語学習システムの成立・洗練過程に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20330135
研究機関東京大学

研究代表者

針生 悦子  東京大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (70276004)

研究分担者 梶川 祥世  玉川大学, リベラルアーツ学部, 准教授 (70384724)
キーワード言語発達 / 擬音語 / 子ども向け発話 / 多感覚対応 / 語彙発達 / プロソディ
研究概要

本課題は,1)子どもの語彙獲得メカニズムの成立過程,2)洗練過程,を明らかにすることを目的としている。このうち1)では,乳児を対象とした実験を行い,大きなモノは低い音を出し、小さなモノは高い音を出すということを,子どもはいつから理解しているのかを調べた。大人(母親)は子どもへの話しかけにおいて,大きなモノが発する音などに言及する時は低い声を、小さなモノに言及する時には高い声を使うというようにして"声の演技"をするが,子どもの側はそれを利用できる能力を備えているかは不明だったからである。結果,子どもは10か月の時点では,音の高低(ピッチ)と物体の大きさとを関連づけてはいないことが明らかになった。大人の"声の演技"に見られるピッチとモノの大小との対応は,子どもの側に初めから備わっているというより,子どもはそのような大人の抑揚から自然に語るための抑揚のつけ方などを学んでいくことが示唆された。
2)に関しては,昨年度に引き続き,"声の演技"を大げさに行う母親の子どもの方が,そうでない母親の子どもより,擬音語理解が進んでいるのかを調べるために,2歳児を対象に実験を行った。結果は全体として,"声の演技"をよくする母親の子どもほど擬音語理解が早いといった関連は必ずしもないことを示すものだった。しかし,語彙の大小で子どもをグループ分けしてみると,語彙の大きな子どもたちでのみ,母親の"声の演技"と子どもの擬音語理解とのあいだに正の相関が見られた。すなわち,この結果は,語彙をある程度獲得したあとでないと,子どもはおとなの"声の演技"を単語(擬音語)習得の手がかりとできるようにはならないことを示唆するものであり,1)の知見とも整合的な結果と言える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の交付申請では,オノマトペに含まれる音韻感覚の形成過程に関連して,1)大人の発話の音響的特徴を分析し,子どものオノマトペ習得との関連を検討すること,2)子どもは大人の発話のそのような音響的特徴にどれだけ敏感かについて検討することを,本年度の計画として掲げていた。そして,1)に関しては,大人の発話の音響的特徴を分析するだけでなく,そのような養育者の特徴と子どものオノマトペ理解の関連を,2)については,大人は大きなモノについて語る時わざわざ低い声色を使うが,子どもはこのようなモノの大きさと音の高低との関連をいつから理解しているかを検討し,いずれについても一定の知見を得た,

今後の研究の推進方策

次年度は,本研究課題の最終年度となるため,これまで得られてきた知見を論文化し,公刊していくことが中心的な課題となる。特に乳児を対象とした研究では,実験データの意味を明確にするための,補足的な実験やデータ分析が必要であることも明らかになってきているので,今後は,データの収集が終わっていない実験を終わらせるとともに,これまで得られてきた実験データを補強するための実験や,コーパス分析などを行っていく。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 幼児における新奇な形容詞の解釈2011

    • 著者名/発表者名
      坂本恵子・針生悦子
    • 雑誌名

      心理学研究

      巻: 82 ページ: 24-31

    • 査読あり
  • [学会発表] 大小を表す擬音語理解の発達:発声の高さは手がかりとなるのか?2012

    • 著者名/発表者名
      梶川祥世・針生悦子
    • 学会等名
      日本発達心理学会第23回大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2012-03-09
  • [学会発表] 24ヶ月児におけるピッチ情報に基づいた語彙判断2012

    • 著者名/発表者名
      山本寿子・針生悦子
    • 学会等名
      日本発達心理学会第23回大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      2012-03-09
  • [学会発表] 前言語期における"言語発達":音声からことばへの転化を支えているもの2012

    • 著者名/発表者名
      針生悦子
    • 学会等名
      電子情報通信学会音声研究会
    • 発表場所
      理化学研究所(招待講演)
    • 年月日
      2012-03-08
  • [学会発表] 高い音を出すのは大きな物体より小さな物体か,黒い物体より白い物体か2011

    • 著者名/発表者名
      針生悦子・梶川祥世
    • 学会等名
      日本認知科学会第28回大会
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2011-09-25
  • [学会発表] 養育者のIDSにおける"モノ"と"動き"のラベリング2011

    • 著者名/発表者名
      大竹裕香・針生悦子
    • 学会等名
      日本心理学会第75回大会
    • 発表場所
      日本大学
    • 年月日
      2011-09-16
  • [学会発表] Do Japanese 24-month-olds utilize lexical pitch accent for word recognition?2011

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto, H., Haryu, E.
    • 学会等名
      Biennial Meeting of the Society for Research in Child Development
    • 発表場所
      Montreal, Canada
    • 年月日
      2011-04-01
  • [図書] 「話し言葉」(pp.238-289)「書き言葉」(pp.361-367)(無藤隆・子安増生(編)「発達心理学I」)2011

    • 著者名/発表者名
      針生悦子
    • 総ページ数
      388
    • 出版者
      東京大学出版会
  • [図書] 「言語発達研究の課題と方法」(pp.122-135)(岩立志津夫・西野泰広(編)「発達科学ハンドブック2 研究法と尺度」)2011

    • 著者名/発表者名
      針生悦子
    • 総ページ数
      330
    • 出版者
      新曜社

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公開日: 2013-06-26  

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