研究課題
本研究の目的は、対人的コミュニケーションに困難をともなう自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorders:以下ASD)の幼児・児童を対象に、これまで視覚認知に比べて研究が極端に少なかった聴覚認知の特異性に焦点を当て、ASD児の会話スキルの向上につながる基礎研究を行うことである。本年度は、一般的には単調なイントネーションを使う傾向があるといわれているASD児の自然な発話の音声特徴をつかむために、自分自身の確信度の高低がプロソディにうまく表れるのかどうかを調査した。ASD児が自信のあるとき・ないときの心理状態の自己評価や、話しことばの特徴を調べることを目的とし、次のような検証を行った。自閉症児童を対象に、難易度が様々な短いクイズを与え、それに対する回答を口頭で行ってもらい、その回答にどれだけ自信があるのかを、顔の表情を添えた5段階の選択肢から選び、自己評価してもらった。検証の結果、問題の難易度に従って、自信の度合いが話し方の特徴にあらわれていることと、実際にその心理状態を表現することは難しいことが明らかになった。加えて、ASD児の会話スキルの特徴をつかむため、コミコニケーションに近い状況での心の理論の働きについて調査を行った。従来の観察型の誤信念課題に比べ、自分の知識を生かして誤信念を持った人物を助けるという状況でのほうが、誤信念の理解が促進されることがわかった。どちらの調査もASD児の自発的なコミュニケーション能力の新たな側面を明らかにしたという点で重要である。すでに学会などでは発表が終わり、現在論文としてその結果をまとめ、23年度中に出版することを目指している。
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Journal of Autism and Developmental Disorders
巻: 41 ページ: 629-645
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巻: 22 ページ: 353-360
Neuropsychologia
巻: 48 ページ: 2841-2851