本研究では、「教師の出」を「教育的瞬間」の把握・判断にもとついた行為として位置づけ、教師の「授業力」について独自の視座から解明を試みるとともに、教師を「学び手」としてとらえ、「授業力」を身につけるための新たな研修システムを構想し、その具体的な方法について提言することを目的としている。本年度は5年計画の初年度として、本研究全体の研究体制を構築することを目指すと同時に、理論的な基盤を整え、研究計画を精緻化し、予備的な調査を開始することを目的として研究活動に従事した。その成果は以下の通りである。 研究体制の構築については、藤沢市教育文化センター教育実践臨床研究部会を研究的な実践(授業分析、ツールとシステムの開発等)を行う主な拠点とする研究関係を築いた。同時に、熊本大学教育学部附属小学校の教員2名とも研究協力体制を築き継続的な授業研究を行なえる体制を整えた。 また、理論的な検討に関しては、国際学会に参加することを通して、「教育的瞬間」の把握・判断を規定する教師の心理的変数に関する情報収集を行い、評価的思考(把握、判断、活用)及び教師行動(「教師の出」)の関連について、作業仮説を構築した。さらに、予備的な調査に関しては、藤沢市教育文化センター、熊本大学教育学部附属小学校を中心として授業のデータを収集する一方、指導的な役割を持つ複数の教員に授業リフレクションの方法を活用しつつ、予備的なインタビューを行い、分析を開始する準備を整えた。
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