本研究の目的は、幼児期の感情制御システムの発達過程を明らかにすることである。日米の就学前期の幼児を対象として、感情制御システムにおける3つのレベルに着目し、同一実験参加者への反復測定データの収集・分析により、その生起要因と発達過程を検討し、感情制御能力の養成につながる知見を得ることを目指すものである。感情制御システムの3つのレベルとは、生理的反応レベル(唾液に含まれるコーティゾールの分泌量)、行動レベル(フラストレーション場面の感情表出および抑制と対処行動、対人的相互交渉場面での行動)、媒介要因(子どもの認知能力、子どもの気質、親の養育態度、親の気質、文化)である。感情制御を3つのレベルと比較文化的・縦断的研究から検討し、複雑系システムを明らかにすることを目的とする。 本年度は、昨年度に引き続き、研究1:4歳児の感情制御システム課題の本実験を実施した。唾液の分泌量には個人差および季節差があり、夏におこなった実験の中で採取した唾液量が不十分でコーティゾールの分泌量の分析ができないと思われるケース及び極端に唾液量が少ない幼児がいた。そのため、当初の予定よりも多くの研究参加者を募集し、目標のデータ数を収集することができた。今後は、生理的反応レベル(コーティゾールの分泌量)の分析とともに行動レベルおよび媒介要因の分析を進め、その研究成果を国際感情心理学会および論文として発表予定である。また、5・6歳児向けの感情制御課題及び認知能力課題についても検討をおこない、縦断研究のための準備を行う予定である。
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