研究課題
本研究の目的は、幼児期の感情制御システムの発達過程を明らかにすることである。日米の就学前期の幼児を対象として、感情制御システムにおける3つのレベルに着目し、同一実験参加者への反復測定データの収集・分析により、その生起要因と発達過程を検討し、感情制御能力の養成につながる知見を得ることを目指すものである。感情制御システムの3つのレベルとは、生理的反応レベル(唾液に含まれるコーティゾールの分泌量)、行動レベル(フラストレーション場面の感情表出および抑制と対処行動、対人的相互交渉場面での行動)、媒介要因(子どもの認知能力、子どもの気質、親の養育態度、親の気質、文化)である。感情制御を3つのレベルと比較文化的・縦断的研究から検討し、複雑系システムを明らかにすることを目的とする。本年度は、研究1:4歳児の感情制御システム課題の本実験で収集したデータの分析を行った。まず、感情制御課題(プレゼント課題)の幼児の言語的反応を分析したところ、日本のほうがアメリカよりもネガティブな反応が多かった。日本の幼児のうち感情制御課題(プレゼント課題)でネガティブな反応をした子どもは、実行機能が低く、他者感情理解の視点取得が低かったが、気質との関連は見られなかった。このことから、日本の幼児の感情制御には、実行機能および他者感情理解が関連要因であることが明らかになった。次に、感情制御課題(プレゼント課題)の幼児の表情を分析したところ、日本のほうがアメリカよりも嬉しい表情を多く示すことがわかった。このことから、日本の幼児のほうがアメリカの幼児よりも感情制御を多く行っていることが明らかになった。本年度の研究成果は、国際感情心理学会および日本発達心理学会等で発表をおこない、学術論文として執筆・投稿中である。今後は、感情制御と生理的反応の関連についての分析を進めるとともに、5・6歳児および児童向けの感情制御課題についても検討をおこない、縦断研究を行う予定である。
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心理学評論
巻: Vol.55(印刷中)
Journal of Abnormal Child Psychology
巻: Vol.39 ページ: 1163-1175
10.1007/s10802-011-9531-5