本研究では、統合失調症を中心とした前頭前野機能障害の病態解明および前頭前野機能の役割とその神経基盤を明らかにすることを目標として、第1に、脳磁気共鳴画像(MRI)と神経心理検査双方を同一被験者に行い、前頭前野の下位領野の体積と遂行成績との関連を検討する。第2に、脳機能画像によって、前頭葉課題による前頭前野の脳活性部位を明らかにする。第3に局在病変のある前頭葉損傷患者、統合失調症および健常者に神経心理学的検査バッテリーを施行し、比較検討する。本年度は、記憶の組織化の検討に関して、20~21年度に実施した課題をさらに深めた課題を作成するために、抽象カテゴリーにおける単語の出現頻度の検討をおこない、25カテゴリーにおける抽象単語の出現率を明らかにした。さらに、Global-Local課題を用いて統合失調症患者における注意の移動の検討を行った。その結果、統合失調症患者では、GlobalからLocalよりもLocalからGlobalへの切り替えコストが健常者に比して大きく、LocalからGlobalへ視覚的注意を移動する過程での障害があることが示唆された。このことから前頭葉機能障害との関連が予測されている。本年度は他に情動処理系を抑制する前頭前野の脳活動を検出することが仮定される注意課題を作成し、健常者にこの課題施行中の機能的脳磁気共鳴画像(fMRI)を実施した。結果については解析中である。また、統合失調症患者と同様に前頭葉損傷患者に神経心理学的検査バッテリーを施行し、データを蓄積しているところである。
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