研究分担者 |
横山 博司 下関市立大学, 経済学部, 教授 (80158378)
坂田 桐子 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (00235152)
藤原 裕弥 東亜大学, 総合人間・文化学部, 准教授 (20368822)
金井 嘉宏 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (60432689)
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研究概要 |
社会不安をはじめとして不安障害には,意味のないことだとわかっていても病理的な思考や行動が生じることがある。これは,意識できない潜在的な処理(記憶構造)が意識レベルでの処理を歪めているからだと考えられる。平成21年度は,社会不安障害を対象として,記憶構造と不安反応との関連,および注意の方向性に関する検討を行った。 (1) 潜在・顕在的処理と不安反応との関連Implicit Association Test(IAT)により測定した潜在的な記憶構造と3種の質問紙により測定した顕在的な記憶構造が,スピーチ中の不安反応とどのような関連を示すかを検討した。潜在的な記憶構造は,言い間違いや口ごもりといった行動面での表出,および心拍数・血圧といった生理的反応と関連していることがわかった。一方,顕在的な記憶構造は,不安の程度や認知の歪みといった認知的症状と関連していることがわかった。このように,処理レベルにより関連する不安反応が異なることが,社会不安障害の治療の難しさを引き起こしていると考えられる。 (2) 自己注目と注意処理社会不安者は,自己注目(自分の内的状態に注意を向ける)をしやすいという特徴を示すが,外的情報である他者に対する注意については一貫した知見が示されていない。スピーチ中の注意の方向性を調べた結果,社会不安者は内的情報(自己)だけでなく,外的情報(他者)に対しても注意を向けるものの,注意の方向を頻繁に変えるという不安定な状態になることが示された。注意が不安定になることで,自己に関連した脅威情報のみを取り入れやすくなり,不安を高めてしまうと推測できる。 記憶構造や注意の不安定性といった潜在的な処理の歪みが,社会不安を維持・増悪させていると考えられる。
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