研究課題
本年度の目的は医療教育場面で役立つ自己制御尺度の開発と応用をさらに押し進めることであった。医療分野では、愛知県立看護大チームが、高齢者を対象に、「地域高齢者の保健行動用の自己制御尺度」の妥当性と信頼性を自己制御課題(口腔ケアの実施、磨き残しセルフチェック等)の遂行結果から検討した。その結果、尺度は10%の有意水準内で妥当性であることが示唆された。また、旭川医科大学チームは、2型糖尿病の患者の性格検査という要因に、合併症と肥満という追加要因を導入し、退院後のHbAlcの推移を予測するための解析を行った。その結果、2型糖尿病の予後を予測する要因の組み合わせが明らかにされた。一方、教育分野では、弘前大チームが、自己制御についての授業実施に伴う小学生の価値割引の変化を見る調査の結果を分析し、割引率とセルフコントロール選択質問との関連を明らかにした。また小学校の低・中学年において、割引率と学力、知能、学級活動などとの関連性を縦断的に調査していく研究に着手した。また、大阪市立大学のチームは、大学生の調査研究で、「日常場面における自己制御選択質問紙」と「遅延割引質問紙」との関係を検討したが、明確な関係は得られなかった。しかし、小学生の研究では、年齢の上昇に伴う割引率の有意な低下が確認された。さらに、同志社大チームは、心理学部の受講生を対象に、遅延価値割引と科目学習の指標(出席回数、期末テストの成績、期末テストに向けた勉強時間等)との相関を分析したが、それらの間に相関は見られなかった。ただし、価値割引と授業姿勢の自己報告の間には相関が見いだされ、遅延価値割引の緩やかな学生は、ノートをしっかりとる傾向が高く、授業を楽しいと感じる傾向が高かった。これらの成果は、医療教育場面で役立つ自己制御尺度の開発という心理学的にきわめて重要な意義と重要性を持つことが示唆される。
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http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/ge/psycho/kiban-b/