研究分担者 |
飯高 哲也 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (70324366)
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
磯和 勅子 三重大学, 医学部, 准教授 (30336713)
野村 収作 長岡技術科学大学, 産学融合トップランナー養成センター, 特任准教授 (80362911)
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研究概要 |
本研究では、特に不確実性が存在する事態での意思決定における脳と身体のメカニズムを探求している。本年度は、行為と結果の随伴性が変動する事態での意思決定における脳と身体の機能的関連について検討した。また、そうした事態における意思決定への、慢性ストレスの効果について検討した。それにより、下記の知見が得られた。 1) 行為(刺激選択)と結果(報酬・罰)の随伴性の変動を、逆転学習により操作し、課題を遂行中の脳活動を陽電子放射断層法で観測し,同時に心臓血管系反応,神経内分泌系反応,免疫系反応を観測して,それらの機能的関連を検討した。逆転学習時にはエントロピーにより表現された意思決定のランダムさの増加が観測され、その度合いは末梢血中のアドレナリン濃度と強く関連していた。また、両者の関連は右前部島皮質の活動により媒介されていることが明らかになった。この結果は随伴性変動に伴い交感神経系活動が亢進し、その結果放出されたアドレナリンが、求心性迷走神経系経由で最終的に前部島皮質に表象され、それが意思決定のランダムさを増すように働くものと解釈された。 2) 上記の逆転学習時における脳と身体の機能的関連は、慢性ストレスにより修飾を受けることが明らかになった。すなわち、慢性ストレスに暴露されている個人では、逆転学習に対する身体生理反応が全般に鈍化しており、それは脳の前部帯状皮質などの身体反応の高次中枢の活動低下によるものであることが明らかになった。 これらの研究知見は、社会神経科学に関する国際会議(Annual Meeting of Social,Cognitive,and Affective Neuroscience,2010年10月シカゴ,アメリカ合衆国)で発表した。
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