研究概要 |
ヒト視覚野における運動視関連領野の応答を調べるfMRI実験を行った.今年度は,今後の研究の基盤となる予備的実験を中心に行い,後の指針となる重要な知見を得ることができた。まず,ロンドン大学のSmith教授の協力のもと,ヒトMT+野の構造を解明するのに不可欠な高解像度fMRIスキャンのテストを行ったが,画像のノイズやゆがみなど,検討すべき課題が多いことが明らかになった。そのため,次年度は多少解像度を落としても確実な機能画像が得られるような形で実験を進めるのがよいことがわかった.さらに,その結果を高精細な皮質地図上に提示するためのソフトウェアについてカーディフ大学のSingh教授と協議し,ソフトウェアの提供を受けるとともに今後の指針を得ることができた.また,得られた機能画像から機械学習によるパターン弁別解析を行うための方法の基礎を築くことができた.これはまだ改良を要するが,次年度から実用的なデータ収集に入る予定である.MT+野における動きと奥行きの情報表現を解明するためのfMRI順応実験は,予備的なデータ収集を終え,暫定的に意味のある結果を得たが,論文などで発表するためには視覚刺激条件などをさらに最適化する必要が明らかになった.最後に,関連する科研費プロジェクト(基盤A18203036)の成果を受け,静止画が動いて見える錯視による脳活動をfMRI順応法を用いて調べる実験を開始した.引き続き条件の最適化とデータ収集を進める予定である.以上,本年度は,本研究課題の達成へ向けた基礎となる知見を得ることに専念したため,成果をまとまった形で記述するには至らなかったのは確かであるが,次年度以降の進展のため有意義な情報を得ることができた.
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